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兜の脇立をはずせますか?-立花宗茂の月輪脇立-

2023/1/18

当世具足と組み合わされる兜、その両横につく飾りを「脇立」といいます。わたしが甲冑を展示する際に最も神経を尖らせるのが、この「脇立」を外す時です。

脇立がどのように付いているのか?どうやって外すのか?

★★★実際に外す動作を見るのが一番わかりやすいので、1月27日のオンラインツアー(*まだお申し込みできます)でご覧いただきたいところです。これこそ通常の展示室では不可能な、オンラインツアーの醍醐味!滅多にない機会ですので、是非ご参加ください。★★★

簡単にいうと、兜の両脇に出ている角元に脇立を差し込んで付けます。(*ネタバレを避けるため、参考写真はオンラインツアー開催後に追加する予定です)

大輪貫鳥毛後立頭形兜(伊予札縫延栗色革包仏丸胴具足)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真の脇立は、金属製だと誤解されがちですが、実は薄くて軽い木製です。黒漆が塗られ、鏡面のように仕上げられています。上部中央の蝶番により、半分に畳んで収納できます。

脇立の下部にご注目ください。角元が少し覗いているのが分かるでしょうか。

脇立を兜に装着する際は、真上から差し込みます。ただし、力まかせに押し込むと、抜けなくなる可能性があります。繊細な文化財を保護しながらの展示作業では、押し込むより引き抜く方が、コツが必要で難しいのです。しかし、角元がみえると見栄えが悪いので、無理のない範囲で押し込まないといけない……これは前立や後立、頭立にはない、脇立だけにある葛藤です。

当世具足より以前の甲冑には脇立が付くことがないので、脇立を外した経験がある学芸員さんも、意外と少ないのではないでしょうか。学芸員でも、兜から脇立を外す瞬間を見る機会は希少なのです。

 

脇立の外し方を一例でも知っていると、他の武将の脇立を鑑賞するのがサラに楽しくなります。

例えば、「銀大中刳大盔旗脇立頭形兜」(福岡市博物館所蔵)も、基本的な造りは同じなので、素材や構造を推測できます。だからこそ、大きな脇立を支える角元の形や、外した脇立を収納する箱についての疑問がサラに生じ、本当に楽しいです。

この楽しみを分かち合える方々が増えると嬉しいので、今回のオンライツアーを強くオススメいたします。

 

オンラインツアー「立花宗茂の甲冑大解剖~すべて魅せます!表も裏も細部まで~」は、オンラインだからこそできる内容を目指した当館初企画です。第1回目は「伊予札縫延栗色革包仏丸胴具足」。展示中の甲冑を脱がせながら、裏側をのぞいたり細部に肉迫したりと、植野館長が直接カメラで撮影をしながら解説します。付録の「立花宗茂の甲冑大解剖解説冊子」(B6版16頁オールカラー)も充実しているので、例えば徳川家康とか、他の武将の当世具足を鑑賞するときにも必ずお役に立つはずです。

 

***ココまで知ればサラに面白い***

学芸員として人前で作品解説をする際、ココまで知ればサラに面白くなるけれどと思いながらも、時間等の都合でフカボリせずに終わらせることは少なくありません。そんな、なかなかお伝えする機会のないココサラ話をお届けします。

 

 

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立花宗茂はニワトリの羽根で兜を飾っていた?!後半

2023/1/15

宗茂の視点でニワトリを見るために、時間をさかのぼってみます。

現存する日本最古の書『古事記』(上巻 天の岩屋)に記される「長鳴鳥」は、鳴くことで太陽の出現をうながすところから、ニワトリを指すといわれます。闇夜が終わり、光輝く朝が来たことを告げるニワトリは、霊鳥として崇められていたようです。

イメージ参考図  狩野英信「中諫鼓鳥左松旭右竹月図」 江戸時代中期 当館蔵

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、雄鶏同士を戦わせる闘鶏「鶏合わせ」の歴史は上代から始まり、時には、『平家物語』にみられるように、「鶏合わせ」で命運を占うこともあったようです。室町時代以降、闘鶏はさらに盛んになり、賭け事の対象ともなって広まっていきました。

 

現代っ子で食いしん坊のわたしは、卵や肉を食べる対象として見てしまうニワトリですが、400年前の宗茂が見ていたニワトリは、朝が来たこと告げ、勇ましく戦う、美しい鳥であったのでしょう。例えば、宗茂より150年ほど後の絵師、伊藤若冲の代表作「絹本著色動植綵絵」【国宝】(国所有 宮内庁三の丸尚蔵館保管)に描かれたニワトリも、色鮮やかな美しさと力強さをもって迫ってきます。

 

久連子鶏などの日本鶏の一部は雑種化されることなく個性が守られ、今も大切に育てられています。容姿の良さ、声の美しさや長鳴性、報晨の正確さ等の長所が育まれ、戦うための強靭さや胆力を養われた日本鶏たちは、まさに芸術品ともいえます。

しかし、そのなかでも、宗茂の兜を飾る羽根のような、玉虫色に輝くほどの艶がある黒色で、幅が広く、ふんわりとカーブする、長めの尾羽をもつ種は、久連子鶏以外には見つけられませんでした。当時の宗茂と久連子地区との接点はなさそうなので、400年前には似た尾羽をもつ他の種も存在していたのでしょう。候補の1つに、鹿児島の幌鶏の系統を考えていますが、すでに絶種して確かめる術がありません。

 

宗茂の兜の羽根(鳥毛後立)は確かにニワトリの羽根ですが、聞くのと見るのとでは全くイメージが変わるはずです。是非オンラインツアーで、芸術品のような日本鶏の中から宗茂が選びぬいた、美しい尾羽をお確かめください。新たな日(時代)の到来を告げる、美しさと強さを兼ね備えたトリの羽根は、まさに宗茂にふさわしく、見た目と意味のトータルでセンス抜群ではないでしょうか。

 

まったくの余談になりますが、この宗茂の鳥毛後立をふまえた上で、同じく鳥毛を兜の立物として使用する、宗茂より4歳年長の細川忠興(1563-1645)所用の兜の「山鳥尾羽の掴指」(黒糸威横矧二枚胴具足)を鑑賞されると、いろいろと考察がはかどるのでオススメです。

 

オンラインツアー「立花宗茂の甲冑大解剖~すべて魅せます!表も裏も細部まで~」は、オンラインだからこそできる内容を目指した当館初企画です。第1回目は「伊予札縫延栗色革包仏丸胴具足」。展示中の甲冑を脱がせながら、裏側をのぞいたり細部に肉迫したりと、植野館長が直接カメラで撮影をしながら解説します。付録の「立花宗茂の甲冑大解剖解説冊子」(B6版16頁オールカラー)も充実しているので、例えば徳川家康とか、他の武将の当世具足を鑑賞するときにも必ずお役に立つはずです。

参考文献 『古事記』上巻「天の石屋②」(古事記ビューアー/國學院大學「古典文化学」事業)、尾崎士郎『現代語訳 平家物語 下』青空文庫文化遺産オンライン(文化庁)、黒田智「ニワトリ 神意を告げる霊鳥」(中澤克昭 編『人と動物の日本史2歴史のなかの動物たち』2009.1.10 吉川弘文館)、日本家禽学会HP「日本鶏の紹介」、小山七郎『日本鶏大観』1979.4.15 ペットライフ社

 

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立花宗茂はニワトリの羽根で兜を飾っていた?!前半

2023/1/11

来たる1月27日のオンラインツアーで大解剖される「伊予札縫延栗色革包仏丸胴具足」。その兜を飾るニワトリの羽根について、フカボリします。

 

現存する立花宗茂の甲冑は、当館所蔵の2領「鉄皺革包月輪文最上胴具足」と「伊予札縫延栗色革包仏丸胴具足」です。どちらも兜に鳥の羽根で作られた飾り(鳥毛後立)が付いています。

鉄皺革包月輪文最上胴具足

伊予札縫延栗色革包仏丸胴具足

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ、動物性の素材は経年劣化が進みやすく、今の羽根飾りは、20年程前の修理時に補修されたものです。残されたわずかな羽根を頼りに探し求めた末、熊本県八代市の久連子鶏(熊本県指定天然記念物)の尾羽と近しいことが分かり、同地区の保存会の皆様のご厚意により貴重な尾羽をご恵贈いただきました。

久連子鶏 雄(写真提供 八代市)

久連子鶏 雄・雌(写真提供 八代市)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このお陰で、光を受けて玉虫色に輝く鳥毛後立が再現され、宗茂の勇姿がイメージしやすくなっています。

実際、宗茂の兜の羽根(鳥毛後立)は、ニワトリの尾羽を束ねたものです。

現代の修復時には貴重な久連子鶏の尾羽を使わせていただきましたが、400年以上前を生きていた宗茂が、希少だからという理由で「久連子鶏の尾羽」を指定したわけではありません。

 

久連子鶏は、平安時代に日本に渡来してきた小国鶏等を基とする、古い日本鶏種です。九州の秘境と呼ばれる五家荘久連子地区では、平家の落人たちが都を偲んで舞ったと伝わる「古代踊り」が連綿と踊り継がれてきました。そこでかぶる花笠は、長さ40cmほどの久連子鶏の雄の尾羽300枚以上がつかわれ、顔を隠すほどもっさりと飾られています。

久連子古代踊り(写真提供 八代市)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

踊りに欠かせない、黒く長い尾羽のため、久連子鶏も大切に伝承されてきたのです。関係者の方々が大変なご苦労を重ねてきた結果、久連子鶏は現在まで保存されましたが、近代化による外来種の流入や交通網の発達が、他の多くの日本鶏を雑種化させ、絶種させてしまいました。

裏を返せば、宗茂の生きていた戦国時代において、日本鶏は珍しくない家禽であったはずです。

 

ニワトリといえば外国鶏種のブロイラーを思い浮かべてしまう現代っ子のわたしには、兜の飾りに「ニワトリの羽根」を選ぶセンスは、すんなりとは受け入れ難い……

しかし実物は、一見すると黒単色ですが、光を受けるとキラキラと輝き、とても美しいのです。

 

この美しさは、展示ケースのガラス越しでは伝わらず、歯がゆく思っておりました。だからこそ、今回のオンラインツアーは絶好の機会です。こちらでもご確認いただけますが、ご覧いただくと、宗茂のセンスの良さを実感できます。

 

でも、美しいというだけで、宗茂はこの羽根を選んだのでしょうか?

宗茂がどんな視点でニワトリを見ていたのか、後半でもう少しフカボリしてみます。

 

オンラインツアー「立花宗茂の甲冑大解剖~すべて魅せます!表も裏も細部まで~」は、オンラインだからこそできる内容を目指した当館初企画です。第1回目は「伊予札縫延栗色革包仏丸胴具足」。展示中の甲冑を脱がせながら、裏側をのぞいたり細部に肉迫したりと、植野館長が直接カメラで撮影をしながら解説します。付録の「立花宗茂の甲冑大解剖解説冊子」(B6版16頁オールカラー)も充実しているので、例えば徳川家康とか、他の武将の当世具足を鑑賞するときにも必ずお役に立つことでしょう。

 

参考文献 八代市HP「久連子鶏」、八代市HP「久連子の古代踊り」、熊本県HP「久連子鶏」、日本家禽学会HP「日本鶏の紹介」、農林水産省HP 広報誌AFF 2016年12月号「特集1とり」、今村安孝「久連子古代踊りと久連子鶏-ヒトとニワトリの関わりと久連子鶏のルーツ」(『畜産の研究』第59巻第3号 2005.3.1 養賢堂)、松崎正治・山下裕昭「熊本県のニワトリ遺伝資源」(『動物遺伝資源探索調査報告書』第16号 2006.3.31 農業・食品産業技術総合研究機構農業生物資源研究所)

 

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