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西原吉治郎設計「西尾市岩瀬文庫書庫」

2023/10/19

まずは、前回の「Googleマップツアー《建築家・西原吉次郎の足跡をたどる》 」から、ご覧ください。





今回の捜索で出会えた、西原吉治郎の最大の足跡が「西尾市岩瀬文庫書庫」・「西尾市立図書館おもちゃ館(旧岩瀬文庫児童館)」です。

ありがたいことに愛知県西尾市【公式】 が、吉治郎さんが設計した建物の解説動画を YouTube上で公開されているので、恩恵に預からせていただきます。




明治41年(1908)に、私立図書館「岩瀬文庫」を開設した豪商の岩崎彌助は、大正年間(1912‐26)に文庫の拡張を計画し、吉治郎が名古屋で開いていた西原建築工務店に依頼しました。

岩崎彌助については、この動画でわかりやすく解説されています。

西尾偉人図鑑
西尾市制70周年記念式典で放映された映像です。
※「岩崎彌助」の解説のはじまりを開始位置に設定



吉治郎が設計し、大正8年(1919)頃に完成した「西尾市岩瀬文庫書庫」は、レンガ造の地下1階地上3階建。小屋組はトラス構造です。

西尾市岩瀬文庫 旧書庫の案内
※建物の解説のはじまりを開始位置に設定

普段は⼊ることのできない岩瀬⽂庫旧書庫の内部を、にしお観光ボランティアガイドの案内でのぞくことができます。



また、吉治郎は児童館も設計しました。
大正14年(1925)頃に完成した「西尾市立図書館おもちゃ館(旧岩瀬文庫児童館)」は、小規模な木造の洋風建築 です。

⻄尾市岩瀬⽂庫 おもちゃ館(児童館)内の案内

普段は⼊ることのできない岩瀬⽂庫おもちゃ館(児童館)の内部を、にしお観光ボランティアガイドの案内でのぞくことができます。



岩瀬文庫には他にも建物がありましたが、上記2棟のみが戦災や三河地震(1945)をくぐりぬけ、国の登録有形文化財となりました。

そして、令和4年(2022)3月に策定された保存活用計画にむけて、耐震補強工事等の調査が実施されていたようです。

* 詳細は、西尾市教育員会文化財課「西尾市岩瀬文庫書庫・西尾市立図書館おもちゃ館(旧岩瀬文庫児童館)保存活用計画 資料編 (PDF 9.3MB) 」2022.3



おかげで、普段見ることのできない内部構造の解説動画も公開されています。
建築家の専門家による丁寧な説明が、とても分かりやすく、楽しいです。



「岩瀬文庫旧書庫の内部構造を見てみよう!」
( にしお本まつり【公式】)
※建物の解説のはじまりを開始位置に設定

現在調査中の西尾市岩瀬文庫旧書庫の内部構造についてお話を伺います。普段見ることのできない旧書庫の秘密が明らかに!




お分かりいただけましたでしょうか?

丸繁建築事務所の内田麻紀子氏が、「教科書どおり」と2回繰り返されました。

「岩瀬文庫旧書庫の内部構造を見てみよう!」
( にしお本まつり【公式】)

※30秒ほどの間で「教科書どおり」と2回繰り返していらっしゃいます



実は、修復工事で設計監理をつとめ、報告書を作成された河上先生が、立花伯爵邸を評するときに頻繁に使われた言葉も「教科書どおり」でした。



もういちど、 建築家・西原吉治郎(1868~1935)の簡単3行経歴を思い出してください。

日本の工業化に必要な高等技術者の養成をめざす私立工手学校で、夜間のみ15ヶ月間の速習で実践的な建築を学び、明治30年から福岡県、明治40年から愛知県で地方官僚建築家として活躍、49歳で退職後、名古屋初の建築事務所を開設した



「教科書どおり」という言葉の背景に、吉治郎さんの経歴を重ねると、すんなりと納得できる気がします。勤勉で真面目に建築業に取り組み、妥協を許さず、施主の要求に誠実に応える吉治郎さんの姿が浮かんできませんか。



「岩瀬文庫書庫・児童館」は、西原吉治郎が愛知県の職を辞した後に設計した建物です。
そして、吉治郎が福岡県時代に設計を引き受け、愛知県へ移動後は手紙などで工事を指示した「立花伯爵邸」も、吉治郎が個人的に請け負った仕事になります。

木造建築の公共施設は、利便性が優先されるため、時代に合わせて改築され、門も残さずに失われてしまう例がほとんどです。
いろいろな事情が重なった末に、福岡県と愛知県にそれぞれ残された西原吉治郎の建築が、立花伯爵と豪商・岩崎彌助という特徴的な個人を施主とするのは、とても興味深い巡り合わせではないでしょうか。



オンラインツアーでは、西原吉治郎が設計した「立花伯爵邸西洋館」を、当館館長が解説します。
福岡県に残る「教科書通り」の建築が気になる方は、 是非オンラインツアーへ!



オンラインツアー「時空を越える旅ー立花伯爵邸オンライン探訪ー」 (2023.11.28開催)では、名勝「立花氏庭園」内に現存する文化財建築のルームツアーをしながら、近代和風建築の見どころや立花伯爵邸の秘話などを解説します。◆解説ブックレット(A5版フルカラー 32頁)付

参考文献
YouTube「愛知県西尾市」【公式】文化遺産オンライン(文化庁)西尾市岩瀬文庫書庫・西尾市立図書館おもちゃ館」文化財ナビ愛知) 西尾市岩瀬文庫書庫・西尾市立図書館おもちゃ館(旧岩瀬文庫児童館)保存活用計画 本文編 (PDF 4.0MB)西尾市岩瀬文庫書庫・西尾市立図書館おもちゃ館(旧岩瀬文庫児童館)保存活用計画 資料編 (PDF 9.3MB)愛知県西尾市HP西尾市岩瀬文庫書庫・西尾市立図書館おもちゃ館(旧岩瀬文庫児童館)保存活用計画」

【立花伯爵邸たてもの内緒話】
明治43年(1910)に新築お披露目された立花伯爵邸の建物・庭園の、内緒にしている訳ではないのにどなたもご存知ない、本当は声を大にして宣伝したい見どころを紹介します。
また、(株)御花 が取り組んでいる文化財活用の一環である、平成28~31年(2016-2019)の修復工事の記録や裏話もあわせてお伝えします。

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