立花宗茂の兜は、太陽の下で見るに限る(個人の感想です)
2024/10/7現存する立花宗茂の甲冑は2領「 鉄皺革包月輪文最上胴具足」と「伊予札縫延栗色革包仏丸胴具足」。どちらも立花家史料館が所蔵しています。
立花宗茂の甲冑、とくに兜については、これまでいろいろと語ってきました。
- 立花宗茂はニワトリの羽根で兜を飾っていた?! 前
- 立花宗茂はニワトリの羽根で兜を飾っていた?! 後
- 兜の脇立をはずせますか? 立花宗茂の月輪脇立
- 意外なところで再発見!立花宗茂の金色の鎧
- 立花宗茂に勝利をもたらした「摩利支天」
おわかりいただけたでしょうか?
立花家史料館の学芸員であるわたしが、立花宗茂の兜をとても好きで、造形として非常に美しいと思っていることを。
現在の立物は20年程前の修理時に補修されたものです。
わたしは、この鳥毛後立(鳥の羽根で作られた飾り) のキラメキを見るたびに摩利支天⇒を連想します。金をつかわず “輝く光” をあらわすのに、このニワトリの羽根はもってこいではないでしょうか。
そして、大輪貫脇立。
金属製だと誤解されがちですが、実は薄くて軽い木製です。黒漆が塗られ、鏡面のように仕上げられています。上部中央の蝶番で半分に畳んで収納されます。
当館の所蔵品台帳の基準となる近代の道具帳「立花家御器目録」に「月輪」と記されているため、立花家史料館では「月輪 ガチリン」と称しています。同じ道具帳には「鉄皺革包月輪文最上胴具足」の胴に朱色で描かれた輪貫も「月輪」と表記されるので、共通の意匠となるのでしょうか。
太陽の「日輪」ではないので、金を使わないのは理解できます。
でも、月の輝きをあらわすために、銀を用いても良かったのでは?黒漆だけだと地味じゃない?と思わなくもありません。
そんなとき、甲冑類の修復をお任せしている西岡甲房さんが制作する、「鉄皺革包月輪文最上胴具足」着装用レプリカができあがりました。
この2013年にレプリカ甲冑は大活躍で、様々な場面で着装されました。
実はこのあと、KBC「前川清の笑顔まんてん タビ好キ」#51 福岡・柳川市 新たな門出を速攻スケッチ(2013.4.7放映)の撮影に訪れた前川清さんに、レプリカ甲冑を着せ付けています。
レプリカ甲冑の活躍を見ているうちに、わたし気付いちゃいました。
黒漆塗の「月輪脇立」は光を反射して、ものすごく輝くのです。
照明が調整された展示室でホンモノを見ている時には思いもしませんでした。
とくに太陽光のもと、角度によっては眩しいくらい輝くのです。
まさに「月」‼️
武将は展示室で兜をかぶったんじゃない!戦場でかぶっているんだ!
以来、戦国武将の甲冑を鑑賞する際には太陽の光を想定しています。
わたしにコペルニクス的転回をもたらした”太陽光を反射する「月輪脇立」”を、是非皆さまにも見てほしい……
しかし、レプリカであっても、立花宗茂の兜を太陽の下で見る機会は滅多にありません。
そこで朗報です!!
2024年10月と11月は、立花家史料館公式キャラクター「立花宗茂と誾千代姫」が屋外イベントに出演する機会が、例年よりも多くあります。
ただし、ホンモノに近づけるため鉄と漆で作られた兜はレプリカでも重いため、公式キャラクターが兜をかぶっている時間は短時間に限られます。
- 10/14(月・祝) 柳川戦国パークin御賑会@福岡県柳川市
- 10/19(土) 関ヶ原合戦祭り2024 @岐阜県関ケ原町
- 11/9(土) 大野川合戦まつり@大分県大分市
- 11/10(日) 臼杵市歴史資料館@ 大分県臼杵市
気になる方は必ずコチラでご確認ください。
当日の天候によっては、兜をかぶらない場合もありますし、兜をかぶってても、時間帯によっては太陽光を反射しません。
公式キャラクター「立花宗茂と誾千代姫」 のパフォーマンスを楽しみながら、ラッキーチャンスをお待ちいただけますと幸いです。
オススメしておきながら、あまりのハードルの高さに慄いています。
ふりかえると、わたしも10年間で数えるほどしか目撃できていませんでした。
*** ココまで知ればサラに面白い ***
学芸員として人前で作品解説をする際、ココまで知ればサラに面白くなるけれどと思いながらも、時間等の都合でフカボリせずに終わらせることは少なくありません。そんな、なかなかお伝えする機会のないココサラ話をお届けします。